GOOD DESIGN AWARD2024年度受賞
株式会社中央住宅、株式会社ポラス暮し科学研究所
戸建分譲設計本部 設計一部
プロデューサー:品川典久
ディレクター:野村壮一郎
デザイナー:山下隆史、山﨑正吾、安川晁生、堀越駿平、福代昇一、大澤真生子、大野友瀬
コンセプト
計画地は船橋市馬込沢の市街化調整区域に位置しています。住民・市・事業者が協力し、4棟の分譲住宅を人と地域の生き物の居場所となる「SuBaCo」にするコンセプトです。広い敷地を楽しむための共有空間・4つの縁側テラスが住む人を外へと誘い出し、生物調査を基にした緑化は鳥や蝶を街に呼び込みます。自然環境と住環境の調和、そしてその持続可能性もデザインし、小さな緑の拠点がつながり拡がっていきます。
①家の中の暮らしを日常的にソトに誘引する工夫②生物にも配慮した緑化で街の植栽を生物の活動領域拡大につなげる。③アプリを使った生物観察プログラム等を組むことでこの取り組みの持続化や、学びの場をコミュニティ醸成につなげる。この3つを目標に生物多様性ふなばし戦略を掲げる船橋市と協議を行い、住んでいる土地とSDGsのつながりも体感できる分譲住宅開発を行いました。
暮らしをソトへ、そして土地・緑・暮らしを少しずつシェアへ
特徴
上部を奥行きの深い庇で覆い、ベンチを設けて溜まり場を各所に設けたフットパス
家の中の暮らしをソトへと引き出す縁側テラス
連続した灯かりによるライティングフローを形成
フットパスの中央部分を膨らませ、コの字型に段差で囲んだ中央広場
計画地は長閑な風景の中に住宅地が点在する市街化調整区域内にあり、1棟当たり180㎡超の広い敷地面積を有する。当初は4棟が南北の道路に2棟ずつ接道するだけで、各々の道路のみに出入りが限られ、全体でのコミュニティが醸成しにくい計画だった。代わりに、1つの計画地の中に4棟から成るクラスターをつくるイメージをし、家の中の暮らしを日常的に外部へ誘引する工夫のもと、人と人が互いの場所を気軽に行き来しながら、広い庭のある生活を楽しめる計画を考えた。また、船橋市は「生物多様性ふなばし戦略」を策定し、人と生き物がともに暮らす街づくりを目指している。計画地には風致地区による厳しい緑地率規制があり、通常より多いボリュームの植栽に前向きな意味を持たせることを模索する中で、街の緑化で生物多様性に貢献するという発想に辿り着いた。そこで市と協議を行い、住んでいる土地とSDGsのつながりも体感できる分譲住宅の開発が始まった。
1. フットパスは各邸を結び、縁側テラスが屋外での活動を促す。土地の広さを最大限に活用し、人と人をつなぐ。
2. 生物多様性の視点から分譲地を緑化。景観以外の緑の価値を引出し、生物の活動領域を拡げ、自然と人をつなぐ。
3. 住民・市・事業者が協働。植栽の手入れやアプリでの生物の学び場づくり等を通じて持続化を図り、未来へつなぐ。
【共有空間】地役権を設定しフットパスを創出。上部を奥行きの深い庇で覆い、居心地を高める。中央の幅員を膨らませ、コの字型に段差で囲んだ中央広場も設計。ベンチと合わせ随所に溜り場を創出。目線に配慮しつつフットパスに向けた開口部が室内外のつながりを強化。給排水用地、バス停やごみ置場への動線でもあり、街中に涼風や生物を呼び込む余白ともなる。
【生物の居場所づくり】生態調査により鳥や蝶が好む樹種を選定し街を緑化。休息場として各邸にバードバスを配し、建物への影響も含め緑陰も計画。
【縁側テラス】「農」等、異なるテーマを設定。ピロティ形状とし、室内との段差に配慮。タープ等の設置手間や物の運び辛さが外への動きを抑止しないため、屋外交流や雨水タンク利用による植栽・バードバスの水遣りも促進。
【持続化】住民・市・事業者の協力体制で意図の共有化。定期的な学び場づくりで住民主体の活動を支援。汎用化へつなげる街づくり指針も自主策定。
審査員評価
敷地を4宅地に分割し、それぞれに建売住宅を建設する、いわゆる「ミニ開発」のプロジェクトである。これまではそれぞれの「住宅」そのものの価値を追求したものがほとんどであったが、本物件は住戸間に発生する「住民同士の関係性」や、更には地域に複数存在する野山や公園などの緑地から飛来する「鳥の休息地」となるように植栽を施し、野鳥と共に暮らす環境を実現するなど、敷地を超えた「見えない関係性」をデザインの対象として意識している点に、業界としての大きな進化が見られ評価した。
GOOD DESIGN AWARD
奥庭のある分譲住宅
地域連携とインテリアの発信モデル
GOOD DESIGN AWARD
農を軸とした地域交流型分譲住宅
路地のある分譲住宅
GOOD DESIGN AWARD
敷地の裏側に路地空間を創出
敷地内に広場空間を創出
GOOD DESIGN AWARD
脱炭素循環型コミュニティ普及モデルの構築
内装用無垢桐パネル
GOOD DESIGN AWARD
シェアスケープ~風景を共有する街区~景観共有型分譲住宅
低温乾燥方式による国産杉パネル
GOOD DESIGN AWARD
次世代型コミュニティの街づくり
4軒で互いに「土地」を分かち合うシェアコートのある住まい
GOOD DESIGN AWARD
IoT住宅による街づくり
地域活性プロジェクト