アンテナモデル

GOOD DESIGN AWARD2024年度受賞

地域連携とインテリアの発信モデル

アンテナモデル

株式会社中央住宅
戸建分譲設計本部 設計一部
プロデューサー:品川典久
ディレクター:野村壮一郎
デザイナー:野村壮一郎、酒井かおり、府川哲大、黒田武志、萩原幸輝、加藤里美

コンセプト

桐が活きる暮らし「KIRI-LIFE」を発信
暮らし文化の創造や地域産業、伝統工芸の活性化に貢献

地場の建材メーカーや組合と共同開発した桐の住宅意匠建材や、その共材でつくった雑貨・家具等を分譲住宅のモデルハウスを利用しトータルに展示することで、インテリアスタイルに留まらず素材の価値や地域連携の活動等を広報する新しい発信の場の提案です。様々なエリアの分譲住宅に展開し広く周知する試みです。
 
浮造りや多重塗装を施した無垢桐建材「キリノカ」の仕上げを伝統手工芸品である桐箱に転用し「キリハコ」としてリデザインしました。その他スツールやテーブル等の桐製家具「キリプロダクト」や、建築に組み込める造作家具「キリシェルフシリーズ」も制作し、LDK空間を「KIRI-LIFE」としてプロデュースしました。キリハコやキリプロダクトをインテリアとしてコーディネートしつつ製品自体の展示も兼ね、また地域連携の内容を発信する「アンテナモデル」として物件の販売と同時にオープンしました。

新しい共有の提案として街区全体を使い3 種の奥庭と路地を設定

共同で開発した桐製品や共材の家具で空間をトータルコーディネート

特徴

  • モデルハウスを桐材でトータルコーディネートし、「KIRI-LIFE」を発信

    モデルハウスを桐材でトータルコーディネートし、「KIRI-LIFE」を発信

  • 分譲地内のモデルハウスの一邸をアンテナモデルに設定

    分譲地内のモデルハウスの一邸をアンテナモデルに設定

  • 壁材とコーディネートできるフロートシェルフとTVボード

    壁材とコーディネートできるフロートシェルフとTVボード

  • オリジナル建材「KIRINOKA」と桐の共材のプロダクト

    オリジナル建材「KIRINOKA」と桐の共材のプロダクト

  • 背景


    埼玉県越谷市で創業し、半世紀超に渡り木の家をつくり続けてきたポラスは、空間に木のぬくもりを運び意匠性を高める木素材の開発に積極的に取り組んできた。その中で地場のメーカーであり近接市の春日部市の伝統手工芸品である桐箱の製造で創業した厚川産業と共同で、住宅内装用の桐の建材「キリノカ」を開発し、主に分譲住宅で桐の内装を採用。そして『桐のパネルと合う家具が分からない』『桐の家具は所謂「桐箪笥」しかないのか』等のユーザーの声をきっかけに、家具や雑貨等のインテリア製品もキリノカのデザインを踏襲して開発すれば、トータルなインテリア提案が可能になると考えた。またその生まれた背景や地域の伝統工芸品の文化等を理解していただければ、より愛着を持って暮らしていただけることに加え、ステークホルダーである厚川産業や桐箱工業協同組合との協働の活性化につながるのではないかと考えた。

  • デザインのポイント


    1. オリジナル桐建材「キリノカ」の意匠を活かし雑貨「キリハコ」や家具「キリプロダクト」を開発
    2. 桐建材を採用した分譲住宅のモデルハウスを利用し建材、雑貨、家具、地域連携活動パネル等を展示
    3. ユーザーに対し建材・家具・雑貨というトータルなインテリア提案するとともに地域連携を広報

  • 経緯とその成果


    ①浮造りや多重塗装を施した無垢桐建材「キリノカ」の仕上を伝統手工芸品である桐箱に転用し「キリハコ」としてリデザイン。その他スツールやテーブル等の桐製家具「キリプロダクト」や、建築に組み込める造作家具「キリシェルフシリーズ」も制作し、主に分譲住宅のLDK空間を「KIRI-LIFE」として厚川産業と共同でプロデュースした。
    ②キリノカやシェルフシリーズを仕様化した分譲住宅の複数のモデルハウスのうち1棟を、キリハコやキリプロダクトをインテリアとしてコーディネートしつつ製品自体の展示も兼ね、また厚川産業との地域連携の内容や桐箱の歴史を発信する「アンテナモデル」として物件の販売と同時にオープン。多くのユーザーに見学いただき素材や地域の取り組みについて理解を深めた。
    ③アンテナモデルにて記者発表会を開催し、地域連携活動や桐箱からキリハコへのリデザイン、住宅への転用等周知の場として活用した。

審査員評価

分譲住宅のモデルハウスに、地域の伝統工芸である桐を加工した建材やプロダクトを使用・展示することで、土地の外部から来ることになる購入者=新規移住者(いわゆる余所者)と地域文化や社会とを接続し、なおかつ、地域の伝統産業の売り上げを伸ばし、これを持続可能にすることを意図したプロジェクトである。これまでの分譲住宅というものは全住戸売り抜けてしまうこと、つまり「売りっぱなし」の事業であったが、ここでは地縁へとつながる地域の人的広がりや、文化・産業の継続性といった、空間的・時間的境界を越えた取り組みがなされている点で、これまでの建売事業と一線を画している。他の建売事業へも展開してほしい新しく社会的意義の高い手法であり高く評価した。