フレーベスト 成増・和光

GOOD DESIGN AWARD2025年度受賞

拡張空間のある分譲住宅

フレーベスト 成増・和光

株式会社中央住宅
戸建分譲設計本部 設計一部
プロデューサー:品川典久
ディレクター:野村壮一郎
デザイナー:野村壮一郎、酒井かおり、黒田武志、岩峪永未子、藤田哲也、山田直生

コンセプト

都市部の狭小池にこそ創る空が見える"庭"のある家

都内に程近い駅徒歩9分・近隣商業地域に建つ90㎡未満の狭小宅地3邸の分譲住宅。オリジナルの構造設計で2階を大きくオーバーハングさせて創出した拡張空間を居室と近い「庭的空間」へと転換。従来の狭小3階を回避しコンパクトな2階ながら空間を確保する、今後の狭小開発のロールモデル化を意図したエクステンションハウスの提案である。

建物2階に創出した拡張空間

建物2階に創出した拡張空間

特徴

  • 大きく拡張したバルコニーには「庭的空間」を提案

    大きく拡張したバルコニーには「庭的空間」を提案

  • 庭的空間を創出するエクステンションハウス

    庭的空間を創出するエクステンションハウス

  • 共有アプローチを採用

    共有アプローチを採用

  • 従来の2.5倍、最大2,275㎜のオーバーハングを実現

    従来の2.5倍、最大2,275㎜のオーバーハングを実現

  • 背景


    分譲開発では都内やそれに類する三県の都市部、また駅徒歩10分圏内など、所謂「好立地」であればあるほど敷地を60~70㎡程度に区画し狭小化させることで土地価格を下げ、その分建物を上へと伸ばし3階建とする開発が多い。また並列駐車場にすることにより壁で囲われたビルトインガレージが1階の大部分を占め、1階居室有効面積が減ることも3階建発生の原因となっている。分譲事業としてはなるべく棟数を増やし平均価格を抑制した方が対象ユーザーが増えて販売を進めやすく、事業収支も想定としては良くなるため、本件も当初は平均66㎡の4邸の3階建にすることが検討された。しかし縦長の狭小3階の家屋が建ち並ぶ住宅地は空が狭く、本来庭があってほしい「土地付き分譲」の意義も薄れると考えられた。以上のことから本件では266㎡の開発地を1区画90㎡未満の3区画とし、コンパクトながら空の見える庭的空間のある2階建の開発に取り組んだ。

  • デザインのポイント


    1. 狭小ながら縦列駐車や地役権による共用アプローチの活用により建物有効面積を確保し高コスト3階建を回避
    2. 斜め方杖柱をオリジナル構造計算ソフトに組み込み軸組では斬新とも言える2275mmオーバーハングを実現
    3. オーバーハングによる2階の「拡張空間」を「庭的空間」へと転換し、狭小地開発でも「居室に近い庭」を提供

  • 経緯とその成果


    【区画】2区画では土地価格から億建となり対象ユーザーが狭まるため3区画に決定。90㎡未満の敷地条件に加え、都市部の立地環境から車利用頻度は低いと想定し縦列型の駐車場を採用。2・3号棟間の共用アプローチの創出と共に、建物1階部分の有効面積の確保と建物形状の成型化を実現。
     
    【建築】1階面積に限りがあるため2階に拡張空間を設けることを検討。斜め方杖柱を構造柱とするオリジナルの耐震シミュレーションを用い、910mmが一般的な木造軸組では斬新とも言える最大2,275mmオーバーハングを駐車場上に実現。浮遊感のある箱の連なる街並を形成。
     
    【提案】拡張空間を「庭的空間」として3種設計。①寝室のベッドとフラットとなる縁側スペースと繋がるデッキを敷設したグランピングスペース。②2階リビングと繋がる人工芝と緑を配したガーデンスペース。③インナーパルコニー→洗面→浴室が一体設計のユーティリティ&家サウナスペース。

審査員評価

狭小開発における新たなロールモデルを提示している点が高く評価された。現在、とりわけ好立地での開発では縦長3階建ての住宅が建ち並ぶ光景が一般的だが、街との関わり方や戸建住宅ならではのプライベート空間の確保という観点から、必ずしも最良の解答とは言い難い。これに対し本計画は、各住戸を2階建てとし、前面駐車場の上部に広いテラスを張り出すことで、2階リビングと連続するガーデンスペースを創出した。この空間を木造軸組で実現するため、最大2,275mmのオーバーハングを支える斜め方杖柱を採用するなど、汎用性への目配りも十分であり、今後の展開も期待される。

その他受賞