結の街(ムスビノマチ)

GOOD DESIGN AWARD2021年度受賞

共有樹木を核とする街

結の街(ムスビノマチ)

株式会社中央住宅
戸建分譲設計本部 設計二部
デザイナー:株式会社中央住宅 鈴木征道、椎名愛子、宮崎俊信 ポラス株式会社 保谷敦

株式会社エスティナと共同受賞

やわらかく、ゆるやかにつながる
共有地の創出と共有樹木
「みんなの木」

昨年からの著しい生活の変化の中で、これからの住宅のあり方が問われている。通常の分譲住宅の区画計画では一邸の敷地面積をいかに広く区画できるかを優先し、所有権に固執した明確な敷地境界壁とともに隣地との遮断を行ってきた。
確かにプライバシーの充実や一定の人との接触を避けることについて建築のシェルターとしての重要な役割があるが、限られた敷地内での閉鎖的な暮らしは時間とともに窮屈な生活を余儀なくされる。
古くからヒューマンスケールの路地空間や井戸端空間が自然発生的コミュニティを形成する大きな役割を担っていたように、これを限られた住宅敷地の中で活用することでコミュニティ・空間・建築における相乗効果を生み出すことのできる、分譲小規模開発の新しい提示ができるのではないかと考えた。

南北の道路を繋いだフットパス。憩いやコミュニティの場となる共有地を創出

南北の道路を繋いだフットパス。
憩いやコミュニティの場となる共有地を創出

特長

コンセプトは、共有+共用で
生まれるコミュニティ

  • 南側住戸

    南側住戸

  • 北側住戸

    北側住戸

  • 境界ブロック、フェンスは設置せず境界線を曖昧に演出

    境界ブロック、フェンスは設置せず境界線を曖昧に演出

  • 緑の借景を室内に取り込む開放感あふれるプランニング

    緑の借景を室内に取り込む開放感あふれるプランニング

  • 設計プロセス


    まずは各住戸の1mを拠出し、4mの共有地(井戸端空間)に共有の樹木(みんなの木を街区の核として設定する。これは民法上、また物件の担保評価上の敷地境界線上に植樹できないという問題を解決し、木をシェアすることによって住民価値観のレンジを高める効果を併せ持つ。
    路地空間と共有持分地の樹木「みんなの木」で構成するコモンスペースにより、豊かで一体的な「場」を創生。

  • 資産価値を担保するため権利形態


    地役権により拠出した街路空間との連結を図り、街路をクランクすることによるアイストップ効果と間口の変化による住戸のズレを生み、街の中心部に開いた集合型の余白空間を創出した。共有と共用を効果的に合わせた手法を選択しながら、同時に区画、コモンスペースの配置計画、緑化計画、住戸計画を行い調整と検討を進めた。結果的に境界線付近の敷地を融通し合うことで、その境界線を曖昧にし、空間的、権利的にも有用で公平である継続的価値の運用が可能となる。

  • 共有樹木


    コモンスペースと各邸の間取を一体で計画し、四季によって表情の変わる緑、樹形を暮らしに取り込む。シェアする樹木、樹種はカツラ(落葉樹)。季節の変化を共感し、冬場には落葉掃除の協働を行う増進装置となる。

審査員評価

南北に抜ける路地と真ん中の共有地がこの4戸の住宅の居住性を格段に上げている。普通なら裏になってしまう場所が表になることで、彩光と通風にも貢献しながらコミュニティーを形成できそうな場をつくっている。区画を微妙にずらすことで、住戸間の目線が合わないような間取りも実現されている。地役権を設定することで可能となったこの手法は分譲住宅地の開発の手法として汎用性があるものだと思う。