結美の丘/全54邸

GOOD DESIGN AWARD2022年度受賞

グッドデザイン・ベスト100選出
街並み計画と住民活動で「緑を育む街」

結美の丘/全54邸

株式会社中央住宅
戸建分譲設計本部 設計二部
ディレクター:稲垣有以知、鈴木征道
デザイナー:本堂洋一 、池ノ谷崇行、日山麻子、笹倉伸行、古畑隆明、吉田怜奈

NPO法人越谷市住まい・まちづくりセンター/株式会社緑住環境計画/結美の丘景観協定運営委員会と共同受賞

「緑の管理」を中心に住民が集い、
持続的に街を育むプロジェクト

2012年春の販売開始から今日まで続く活動で、さいたま市初の景観協定のもと、計画的に配置された分譲地の緑化空間を、住民の力で緑の管理を行い、それによって街のコミュニティの成熟と経年美の実現を図ったプロジェクト。
プロジェクトは、近年の①緑の消失、②画一化された家の量産、③街の経年劣化、④地域コミュニティの希薄化などの問題意識からスタートした。

「結美の丘」の街並み

「結美の丘」の街並み

特徴

コンセプトは、経年と共に緑が育まれ、
景観が美しく深化する街

  • シンボルツリーのある出会いの広場

    シンボルツリーのある出会いの広場

  • 花の小路となるフットパス(北入り口)

    花の小路となるフットパス(北入り口)

  • 「結美の丘」 街区内部の街並み

    「結美の丘」 街区内部の街並み

  • 住民の方々によって進められる緑の管理と育み

    住民の方々によって進められる緑の管理と育み

  • 背景


    「結美(ゆうび)の丘(全54邸)」は、東北大震災からちょうど1年後の2012年3月に第一次販売を開始した。当時は震災の影響もあり、住民同士の絆の大切さがクローズアップされた一方、都市部を中心に地域コミュニティの希薄化や緑の消失、地球規模での環境の悪化がさらに深刻化し、今日にまで至っている。また2011年には景観法による「景観協定」の認可を受けることが建設地である「さいたま市」においても可能となっていた。こうした背景により、「結美の丘」では持続的な街の育みを行うための基盤として景観協定を定めるとともに、緑化空間を計画的に配置。共有空間や緑の管理を通じて街の保全を住民の力で行い、もって街のコミュニティの成熟と経年の美の実現を図った。

  • 街づくり


    各住戸は、景観協定によって沿道からの外壁のセットバック、敷地の利用用途や付属建築物の制限、樹木の植栽や緑化の基準が定められているが、その他にこの54邸の街区には南北を通り抜けできるフットパスとメインゲートとなる広場、外周道路沿いにグリーンベルトが設置されている。これによって四季折々の草花が街を包み込むランドデザインとしている。

  • 住民活動


    広場やフットパスの植栽、各住戸のみんなの木や街路樹の一部は、全住戸の共有持ち分として住民全体で管理。具体的には年3~4回の緑の管理活動(剪定、花植え、清掃)を毎年実施するとともに、適時にNPO法人や当社において支援を行っている。こうした活動の結果、経年美化が深化した美しい街並みが誕生した。

審査員評価

一定規模の場所が住宅地へ変わる時、そこにいかにして人間的な環境の持続性やコミュニティを生み出せるかが、本来であれば問われるべきだろう。このプロジェクトではその問いに、事業者が一貫して誠実に対峙してきた痕跡が見てとれる。住民活動の自発性と継続性を生むためのプロセス、緑の配置や育成保全の計画、コミュニティ・ベネフィットを生み出す景観協定など、この場所で積み重ねられてきたソフト面での努力は、他の開発事例においても広く共有すべきものと評価された。